手奇塾のブログ

大人も知らない各社歴史・公民教科書の違いをわかりやすく徹底比較します。

「教科書検定は機能しているか?」第6回 ピラミッド 祖国の意識と参政権

教科書検定は機能しているか?

*大林組、木村所長の「仁徳天皇陵の復元と施工計画」が検索されにくくなっています。

http://seisan.server-shared.com/382/382-8.pdf

ここはやはり面白いので取り上げないわけにはいきません。自由社26ページで、「戦争で祖国のために血を流す覚悟のない者には参政権は与えられませんでした。また、武器は自分でまかなうという決まりがありました。武器を買えない貧しい人々は戦争に行けず、したがって参政権もありませんでした、と記述しています。

自由社は、「ローマの軍隊は指揮官だけでなく、末端の兵士に至るまで「祖国のために」という意識をもって戦いました。これがローマの軍隊の強さの秘密でした。」と記述しています。この部分が「断定的に過ぎる」と検定クレームがついたそうです。「祖国のために」戦うなんてとんでもない、愛国心を否定することが正しい教育という間違った思想に基づくものであることはおそらく疑いないでしょう。「我が祖国」などとはいってはいけない、「わが国」とも言ってはいけないなど、およそ信じられないことがまかり通っているそうです。しかし、ヘロトドスが「歴史」を書いたころサラミスの海戦で船の漕ぎ手となった、武器を買えない貧しい人々の働きは、高く評価され、ギリシャはすべての市民に、参政権を与えることになった、と自由社は記述しています。ここの「祖国のために血を流す云々のところは検定意見が付きませんでした。検定そのものがいい加減なのでしょうか。

約2500年前、ギリシャの歴史家で「歴史の父」と呼ばれるヘロトドスは、「歴史」という本で「大ピラミッドは、10万人の奴隷が20年間働いて造ったもので、クフ王という残忍な王の墓である」と書きました。それ以来ピラミッドは専制権力や奴隷社会の象徴とされてきました。

ところが、1990年代にピラミッドを作った労働者の墓が発見され、1000体以上の人骨の中には、穴をあけて治療した跡のある頭蓋骨などがありました。また、半分は女性で、子供の墓もありました。労働者は、家族で暮らしていた自由民だったのです。ナイル川は、毎年7月から10月まで反乱で農作業ができなくなります。そこで王は、農作業ができない農民を中心に、全国から人を集めて、ピラミッド建設の仕事を与え、衣食住を保障しました。一つの事業に力を結集し、国の結束を強くすると言う目的もありました。ピラミッドは国家統一の記念碑でした。石切り場には「国王万歳」という落書きが残されていました。どうですかみなさん、歴史の真実は、ヘロトドスの言うような残忍な王様ではなかったのです。

 さて小学生、中高校生のみなさん、日本の歴史教科書の中に似ている話があることに気づきましたか?これは東京書籍の少学生の歴史教科書、21ページの絵です。ここには次のような記述があります。「古墳を築くには、すぐれた技術者を指図し、多くの人々を働かせることのできる、大きな力が必要であったと考えられています。隣のデータのところには、工事期間15年8か月。動員人数はピラミッドよりも多い、のべ680万7千人。総工費、796億円などと、細かく数字が並んでいます。これは、エジプト・クフ王のピラミッドや、中国大陸の秦の始皇帝陵よりも大きい485m、世界最大規模の仁徳天皇陵です。世界遺産にもなっています。

高校山川詳説日本史Bも、25ページ側注で、仁徳天皇陵について、「その築造には、全盛期で1日辺り、2000人が動員されたとして、延べ680万人の人員と、15年8か月の期間が必要であったと計算されている」と記述しています。まるで小学生の時習った、おさらいをしているようです。  

総合建設業の大林組のある所長が、NHKの依頼で、昔の土木技術で同じものを作るとしたら、どれくらいの時間と費用と人手がかかるかを計算したわけです。しかもその計算をされた所長さんが、数字に特に意味があるとは言えないと、おっしゃっておられるのです。さらに、堀を掘った土を積み上げただけでは足らない、一体不足分はどこから運んだのかと疑問を呈しているわけです。しかし東京書籍も、山川出版もこのことは伏せて、エジプトのプラミッド建設のヘロトドスの言い分と同じように小学生や高校生に「残忍な王の墓」という印象をもたせるような記述をしているのは明白です。実は、仁徳天皇陵の地元の言い伝えでは、山や丘を切り崩して開墾したときの残土を積み上げたもので、後に感謝の気持ちを込めて天皇陵にしたそうです。ピラミッドのお話ととても似ています。しかし、少学東京書籍や高校山川の歴史教科書は、ヘロトドスの言うような奴隷労働を連想する記述になっているわけです。